目次

第1 遺産の範囲や評価に関し勘違いをしたまま遺産分割協議書を締結してしまった場合における遺産分割協議の効力

第2 遺産分割協議で後でもめないための方策

第3 相続不動産・株式について認識のズレ(遺産分割協議無効リスク)を解消することの困難性

第1 遺産の範囲や評価に関し勘違いをしたまま遺産分割協議書を締結してしまった場合における遺産分割協議の効力

遺産分割協議は相続人間で行う契約の一種と考えられますので、協議締結の際に重要な点に勘違いがあり、勘違いをしたことに関して責任がないような場合は、遺産分割協議の効力は否定されるものと考えられます。(最判平成5年12月16日判時1489号114頁)

この点、以前の記事でもお話ししました通り、遺産の範囲や評価額は、遺産分割協議(を含む相続全体)にとって重要なポイントです。

したがって、遺産の範囲や評価額に関し、大きな勘違いがあり、そのような勘違いが無ければ遺産分割協議をしていなかったと考えられる場合は、効力が否定されてしまう可能性があります。

裁判例上も、遺産の評価額について、実際の時価とは異なる価額であると誤認していた場合(東京地判平成29年10月11日判例集未搭載:相続不動産の時価につき実際よりも高く誤認していたケース)や、遺産の範囲について、実際に存在していた遺産の一部を知らないまま遺産分割協議を成立させた場合(東京地判平成27年4月22日判時2269号27頁:遺産として他にも株式があったことを知らないまま遺産分割協議を締結したケース)について、錯誤(民法95条)を理由に、当該遺産分割の効力が否定されています。

もっとも、遺産の評価額や遺産の範囲など重要なポイントについて勘違いをしていたからといって、常に、遺産分割協議の効力が否定されるわけではありません。

調査不足などを理由に勘違いをした側に重大な過失があったとして、遺産分割協議の効力が否定されないこともあります。(東京高判昭和59年9月19日判タ544号131頁:相続不動産の時価につき実際の時価よりも安い金額であると勘違いしていたケース)。

第2 遺産分割協議で後でもめないための方策

実際のところ、勘違いを理由に遺産分割協議の効力が否定されるかどうかについては、遺産分割協議締結までの諸事情を総合的に考慮し、そのような勘違いをしてしまったリスクをどちらが負うべきか、という微妙な判断に基づくものです。

したがって、遺産分割協議を行うにあたっては、遺産の評価額や範囲について勘違いが生じないように、また、もし万が一勘違いが生じたとしても遺産分割の効力をめぐり紛争対立が生じないように、可能な限り、共同相続人間で認識を共有・統一しておき、また、「言った言わない」の問題にならないよう、共有・統一した認識内容を後日証明できるようにしておく工夫が求められます。

加えて、遺産の時価や範囲に関する共同相続人間の認識と実際の時価・範囲との間にどの程度のズレがあれば、遺産分割協議の効力を否定するのか、あるいは否定しないのか(=その程度の勘違いであれば許容するのか)についても、明確にしておくことが望ましいと考えられます。

第3 相続不動産・株式について認識のズレ(遺産分割協議無効リスク)を解消することの困難性

もっとも、相続不動産については、物理的な欠陥のほか、不動産上に他人の権利が存在したりなど、容易に発見できない瑕疵が存在する場合が多々ある上、「一物四価」(固定資産税評価額、公示価格、路線価、時価)というように価格も複数ありややこしい上に、時価について算定方法は一様ではなく、依頼する鑑定士によって価格が異なることも少なくありません。

また、株式についても、株式は会社を所有する権利であるところ、会社内部の状況ははっきりしていないため、相続人間で株式の価値の前提事実について(会社内部の状況に関する認識内容)食い違っているケースがあります。

そして、株式のうち、株式市場における取引相場のない非上場株式については、価格(時価)の算定方法は多様です。

このような相続不動産や非上場株式については、遺産の評価について認識と事実のズレが生じやすいと考えられます。

当事務所では、不動産鑑定士、税理士、不動産コンサルタントなど他業種の専門家と連携しながら相続業務を行っておりますので、相続不動産や非上場株式が絡む難易度の高い遺産分割についても、お手伝いすることができます。

後に紛争(争族)にさせないためにも、また、できるだけ有効な遺産分割協議を締結するためにも、相続不動産や非上場株式を含む遺産分割でお困りの際には、当事務所にお早めにご相談ください。

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